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早いもので3月に入り、東京では春一番も吹き、春本番まであと少し。あちこちで梅が開花してきました。でも気温の変化が大きな時期なので気を緩めると体調を崩しそうですね。

先日、仮名書道を指導されているある大先輩の手記を読みました。手記の内容は、これまでの書道人生を振り返ったもので、どんな勉強をしてきたか、師から受け継いだもの、そして今後について端的にまとめられたものでした。手記を書かれた先生も、その師もどちらも女性ですが、読んでいて女性とは思えないほどの、いや女性だからこその強さと厳しさ、まさに凛とした空気が伝わってきました。

特に一番強く印象に残っているのは、その先生が師範になる前の勉強姿勢と、師匠の姿。ほぼ毎日、家事を終えてから一寸の時間も惜しんで練習に明け暮れてもなかなか上達せず、いざ師匠に添削して頂こうと作品を持っていっても、じっくりと見て頂けず、「ハイ、次の方、どうぞ」と言われ、ほんのちょっとのアドバイスでも頂きたいと思いつつも「もっと勉強して参ります」と言って引き下がるしかなかったそうです。

それからその先生は、ただ書くだけでは駄目だと感じ、原点に戻り、古今和歌集、万葉集の全訳を読まれたそうです。「学ぶ時、ただ上手に書こうとするのではなく、体で古典の特徴、情景を味わい、それを頭に留めておく事が大切だと学んだ、それが臨書する事だと思うのです」と手記に書かれてありました。

そのようなひたむきな勉強の姿勢をずっと師匠は陰で見ておられたのでしょう、後に都美術館へ出品するように勧めて頂き、また指導者として授業を受け持つように推薦して下さったそうです。

私も最近になって、ようやく臨書が分かってきました。ただ上手に書くだけではなく、その世界観の全てを吸収したいと思うと、何度書いても終わりがありません。テクニックだけでは伝えられない「何か」とは、時に呼吸(リズム)であったり、空間であったり、線質であったり、解釈し自分なりにデフォルメしてゆく応用力だったり、最適な道具の選定だったりと、数えだすときりがありません。

いくら練習しても上手く書けないと、嫌気もさし、ムキになり、結果として字は乱れ、どんどん手本から離れてしまいます。そんな時は少し視野を広げ、例えば訳を読んだり、歴史を振り返り、それが書かれた時代背景を理解してみる、又は、いつもと違う道具で試してみる、そんな姿勢はどの分野にも共通するのではないでしょうか。わき目も振らず一つに集中してグイグイ頑張れる時もあるけれど、持続は出来ません。一度立ち止って、周囲をゆっくり見渡して自分に足りないものを一つずつ拾いながら歩いていくと、例え回り道をしていても次の目標地点が定まり、栄養補給も万全となり、またハイペースで走りだせる、、、これを繰り返す、、、このようなものだと思います。

書道はどこから勉強してもいいのです。色々な書体、時代の書があります。色々な道具があります。色々な解釈があります。ここからなら入り易そう、と思った入口から入ってみてください。そしてそこで一つ体得したら隣りの入口の世界も見てください。それをずっと繰り返していけば、書道という大きな世界を知る事ができるはずです。

私はよく人から「何故、作品のパターンが多様なのですか」と問われる事がありますが、一つの入り口だけではなく色々な入り口から試しているからなんです。一つのテーマを見て、どの書体で、どの時代の雰囲気で、どんな墨色で、どんな筆と紙で、、、と考えるだけで瞬時に数えきれないほどのパターンが生まれている訳です。決して私に才能や独創性がある訳ではありません。入り口の数です。そして、、、やはり師からの駄目だしに他なりません。

何事にも行き詰ったら、違う入り口から入ってみて違う世界を見てみると、行き詰っていた事が俯瞰できて、あっさり解消できたり、またはその重要性に気づいていくものだと思っています。私もまだまだ入り口を増やしていきたいと思っています。いや、むしろこれからが正念場。暖かくなってきた事だし、パワー全開でいきますよ。



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書道家(書道師範)、東京生まれ、北海道育ち、現在都内在住

美帆

Author:美帆
書道家(書道師範)、東京生まれ、北海道育ち、現在都内在住。あおい書道教室を主宰、大人から子供までを指導。

毎週月曜日夜間クラス(場所:新橋、成人対象)、隔週火曜日午後クラス(場所:高島平)の生徒募集中です。お問い合わせはメールフォームからお願いします。

出張指導にも応じています。プライベート、グループ(企業・団体への出張可)でのレッスンなど初心者から師範取得まで柔軟に対応いたします(級、段の取得可能)。

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