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手本と目標

早いもので6月に入りました。本当に時間の流れが早いですね。でも少し気が焦ってしまいます。そろそろ今年の後半を意識しなければ、と。

先日は東京都台東区にある書道博物館に行き、「書のおてほん」展を見てきました。ここは書道愛好家しか訪れないといっても過言ではないので、いつでも人が少なく静かな場所で、また常に良い拓本を展示している場所は広い東京といえども少ないので書道愛好家にとっては有難い場所でもあります。

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「お手本」という言葉、習い事をしている人は勿論ですが、そうでない人も良く使う言葉ですよね。辞書で調べると①模範となる文字・絵画などを書いた本②行動の模範、鑑③規準となるかた、様式。とありました。

ここからは私自身の事になりますが、書道をする時に手本としているものは古典のみにしています。例え師匠が書いて下さったものでも(滅多にそのような事はありませんが)手本とはしていません。それは参考作品となり、いつか越えなくてはいけない存在と思うようにしています。手本という存在がとても大きく、尊いものであるという思いがどんどん深くなり、一生勉強しても辿り着けないような存在、どんな状況であっても変わらない存在、揺ぎ無い絶対な存在を手本としたいからです。こう考えるようになったのも私自身の成長だと感じています。私が習い始めた頃は、何が良くて何が悪いのか、まさに右も左もわからない時、そんな時は目の前の師匠の字が全てでしたが、練習を積み下手ながらも少しずつ世界が広がるにつれ私の師匠はだんだん手本を書いてくれなくなり、今に至っては何も書いてくれません。また私も求めていません。

先日見てきた「書のおてほん」展で展示されているものも全て古典です。書道を勉強している人なら知っているお馴染みの中国の古典が時代順に展示されています。面白いのは作品のキャプションに「学ぶべきツボ」が書かれていること。難しい書道文化を少しでも理解して欲しいという主催者側の気持ちなんだろうと想像しています。他にも「楷書」はなぜ「楷書」という名称なのか、といった解説もあり、私としてはそちらの方がよっぽど勉強となり、メモして帰ってきました。

手本はなるべく遠い存在であった方が自分が苦しくなった時や自分を見失った時に冷静に現実を受け止め、次に取るべきアクションを見い出せやすいと感じています。もし、お手本がちょっと頑張ったら手が届くようなレベルだと、到達した瞬間、その次を見失うでしょう。十年書いても、二十年書いても、五十年書いても答えが出ないから、ひたむきに謙虚に、そして冷静に取り組めるのだと思います。

とはいえ、常に遠くばかりを見ていると目の前が見えなくなり、今やるべき事が分からなくもなるので、やはり定期的に添削を受けたり、他の人の作品を見る事も重要となります。そして次に超える山(目標)を設定して無事に登りきったら一休みし、また次の山に向かう、を繰り返すしかありません。螺旋階段を登るが如くです。

生涯かけても辿り着けそうもない大きく絶対な存在を「手本」とし、その手本に近づくために段階に応じて幾つも「目標」がある、そんな考え方が分かりやすいと思います。

生きていく事も同様だなと思います。仕事が幾つも重なったり、トラブルに巻き込まれたり、自分に原因が無くてもやらなくてはいけない事など、生きていれば面倒な事や不条理な事が沢山です。でも自分の生き方に一つの大きな「手本」を持ち、その手本に近づくための「目標」を持ちだすと、目の前の面倒な事、厄介な事がくだらなく思えたり、小さく感じます。これは私が長年、書道を勉強しつつ会社勤務をしていた経験から自信を持って言えます。

因みに書道博物館では図録を二冊、購入しました。最近は作品の写真部分よりも後半の解説が目当てで図録を購入しています。まあ、どんどん書道オタクに磨きがかかってきている状態です。

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コメント

こんにちは

石本さんの考えに共感しながらいつも読ませていただいています。
書を学ぶことにこれでよいという終わりはないですし、楽しかったり苦しかったり、そんなことを繰り返しながら少しずつ違うところへ行けるのかなあと思いながら続けています。
こちらのブログを読ませていただくと、気づかされることがたくさんあります。ありがとうございます。

Tomokaさんへ

暖かいメッセージ、どうもありがとうございます。
仰る通り書の世界は尽きなくて、この先の道がどこに辿り着くのかたまに想像しますが、想像に過ぎませんよね。どこに進んでも後悔しないよう、今出来る事を一つ一つ着実にこなしていくしかないですが、たまに不安になる事もあります。そんな時、Tomokaさんはじめ周囲の方の存在がとても大きく、目に見えない力で支えて頂いていると感じます。書道で繋がった縁は「墨縁」と呼ぶそうなので、Tomokaさんとの出会いはまさに墨縁ですよね。これからも宜しくお願いします。

お邪魔致しました。

突然失礼致します^^
題名につられてついついお邪魔してしまいました。

私はまだお勉強段階ですが
書道のお手本に対する気持ち、見習いたいと感じました。

書道博物館と言うものがあるのですね…。
家の周りに博物館系がないので、ちょっと羨ましく感じてしまいました(笑)

宜しければまたお邪魔しても大丈夫でしょうか…?

凛翠さんへ

ブログへのご訪問、どうもありがとうございます。
凛翠さんも書道を勉強されているんですね。終わりない長い道ですが、一緒に頑張っていきましょう。
書道博物館は身近に本物を見れるのでとても良い場所です。機会があれば訪れてみてください。また本物でななくても印刷された本は沢山ありますから、少しずつ古典臨書を進めていってはいかがですか?まずは唐の時代のものがおススメですよ。
ブログの更新はスロー気味ですが、これからも是非お立ち寄りください。
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プロフィール

書道家(書道師範)、東京生まれ、北海道育ち、現在都内在住

美帆

Author:美帆
書道家(書道師範)、東京生まれ、北海道育ち、現在都内在住。あおい書道教室を主宰、大人から子供までを指導。

毎週月曜日夜間クラス(場所:新橋、成人対象)、隔週火曜日午後クラス(場所:高島平)の生徒募集中です。
レッスンの詳細はホームページ
(https://www.miho-ismt.com)をご覧ください。
お問い合わせはホームページ、または本ブログのメールフォームからお願いします。

出張指導にも応じています。プライベート、グループ(企業・団体への出張可)でのレッスンなど初心者から師範取得まで柔軟に対応いたします(級、段の取得可能)。

いまさら聞けない筆使いの基本、臨書の学習方法、創作の基本、理論などに特化した経験者向けの指導も可能です。既に他の教室で習っているものの行き詰まりを感じている方、伸び悩んでいると感じている方、私をセカンドオピニオンとしてお気軽にご相談ください。

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(注)プライベートレッスンについては、女性限定とさせていただいております。

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